「特異的なトレーニング」
次は「特異的なトレーニング」をテーマにお届けしようと思います。
まず「特異的」ってなに?というところから始まると思います(^^;
トレーニングにはその競技独自の動きであったり、筋肉の動かし方があるものです。
その独自の動きのパターンに沿った形で負荷をいろいろとかけていくことを「特異的」なトレーニングといいます。
具体的には「実際の投球動作に対して」少し重い重さや逆に軽い重さでトレーニングすることを「特異的」なトレーニングといいます。
そして、こういうトレーニングをした場合に投球のスピードが速くなるのか?という研究も実際にいろいろとされています。
まず、通常よりも重いボールでトレーニングする場合の効果としては、筋力の発揮レベルが通常よりも多く必要なことによる「特異的な動作上の筋力の向上」が見込めます。(オーバーウェイトトレーニング)
次に通常よりも軽い重さでのトレーニングは、筋力の発揮が低く済むので、より爆発的な動作スピードが見込め「通常よりも速い動作スピードの習得」効果が見込めます。(アンダーウェイトトレーニング)
スプリントで「アシステッドスプリント」と「レジステッドスプリント」という、坂道を駆け上がって負荷をかけるトレーニング効果と、坂道を下りダッシュするトレーニングがありますが、その関係と全く同じだと思っていただいてよろしいと思います!
実際の効果に関して
いままでの「一般的なトレーニング」と「特殊トレーニング」ではかなりの確率でトレーニング効果があがったのに対して、この「特異的なトレーニング」は少し微妙とも言える結果がでているんです(^^;
どういうことかというと、研究機関の結果がそれぞれバラバラな結果が出ているのです。
また、投球動作というと、皆さん真っ先に野球をイメージすると思いますが、実歳はサッカーのスローインだったり、ハンドボールだったりと投球動作が必要なスポーツはいろいろとあります。
そしてそれぞれで違う結果がでていると思っていただければいいと思います。
まず通常の重さより重いボールで投球する「オーバーウェイトトレーニング」です。
オーバーウェイトトレーニング
野球において、標準の重さの20%重いボールでトレーニングした場合ですが・・
ほぼ全ての研究者が「このトレーニングの優位な投球速度の向上の変化は見いだせない」と結論づけています。
これらの研究には、結果的に速度の向上の結果がでているにもかかわらず、他の要因のほうが強く考えられ、オーバーウェイトトレーニングの有効性というのは、はっきりと認められるとは言い難いと述べています。
ちなみに野球の投球スピードの向上がオーバーウェイトトレーニング(20%以上の負荷も含む)で見られたのは
- 7つの研究のうち4つ、(3つは変化なし)
- 対象人数総勢103名中27名(76名は変化なし)
という微妙な結果が報告されています。
(全員高校から大学の野球選手対象)
しかし、サッカーのスローインではより優位な速度向上はみとめられたそうです。
なんとなくですがわかる気がするのは僕だけでしょうか(^^;
この結果の推測ですが、野球の投球スピードというのは、他の競技のスローインに対して最もスピードが速く、よりゆっくりなスピードであるサッカーのスローインのほうがオーバーウェイトトレーングという通常よりもゆっくりな速度でしか行えない負荷抵抗と速度的にマッチしやすかったのではないかと考えられます。
もうひとつ、プーリーでウェイトを投球動作で引っ張るトレーニング対しては野球でもより速度向上の結果がでています。
プーリーだと2つ野球選手を対象とした研究があり、総勢14名を対象にした研究ですべてスピード増加の結果がでいるそうです。
アンダーウェイトトレーニング
アンダーウェイトトレーニングという、通常より軽いボールで投球するトレーニングに関してもほぼすべての研究(3つ、総勢30名)で速度の向上は見られています。
なんだ、速くなってんじゃん!と思われるかもですが・・・
これらの速度向上の結果がでているにもかかわらず、「そのトレーニングの有効性が見いだせない」と結論付けられているんです!
これはどういう事なのかというと「どれでトレーニングしてもそれほど差がでなかった」という事なのです。
オーバーウェイトでトレーニングしても、プーリーでトレーニングしても、アンダーウェイトでトレーニングしても、すべてのトレーニングで「これがめっちゃ結果がでた」というほどのものがなく、本当にそのトレーニングのおかげで伸びたのかどうが断定できるところまで結果がでなかった・・・というのが正直なところのようです。
結果的にはすべての研究で、野球に限らずハンドボールやクリケット選手も含めて、ウェイトを重くしたり軽くしたりして投球動作を行いトレーニングした結果は
- 総研究数26のうち18、
- 69.2%で投球スピードの向上が見られた
という結果になっています。
そして・・・・・もうひとつ着目しなければならないのは「スピードがかえって下がった」という結果がひとつもないという事です。
なので、これらのトレーニングをスピード向上のために取り入れるという事自体を「否定する」までには至らないのかもしれません。
ここで注意しなければならないのは、過重負荷をかけて行う投球動作トレーニングは「故障」を十分にケアしなければならないという事があります。
重量の設定に関しては標準でつかわれる道具の5~20%以内、通常の道具を使用したトレーニングとウエイトをコントロールしたトレーニングの比率は1対2以内に抑える事が勧められています。
「いろいろなトレーニングを混ぜたらどうなるのか?について
まずちょっとおさらいですが、今回ご紹介しているトレーニングの種類には
一般的な筋力トレーニング
- バーベルやダンベルをつかったベーシックな筋トレ
特別な筋トレ
- チューブや瞬発的(プライオメトリックトレーニング)、特殊な機械をつかったトレーニングなど
特異的な筋トレ
- 投球動作上にさまざまな負荷をかけるトレーニング
(重いボールを投げる、軽いボールを投げる、ケーブルプーリーを投球動作で引く)
などがありました。
では「これらを組み合わせて行う」とどうなったのか?です
「いろいろなトレーニングを混ぜたらどうなるのか?
まず、一般的な筋トレと特別な筋トレを組み合わせて行った場合です。
これは2007年に大学の野球選手12名に8週間、
- 一般的的な筋トレ
- 上肢のプライオメトリックトレーニング(瞬発的なトレーニングのこと)
をしたところ・・・投球スピードは優位に上がったそうです!
しかし、一方、2010年に行われた大学野球選手23名にオフシーズンとプレシーズンに
- 最大筋力トレーニング
- スピード筋力
をあわせた計画的な筋トレを週に3回実施しました。
- シーズン中はスピード筋力のみに焦点を当てたトレーニングを週に2回実施
プレシーズン、シーズン中、オフシーズンそれぞれで速度計測をしたところ・・
球速の向上は見られなかったそうです。
しかもこの期間中に下半身と上半身両方筋力が向上したのにその増加が、投球速度に影響を及ぼさなかったというところがこの研究は興味深く注目されています。
つぎに一般的な筋トレと特異的なトレーニングの組み合わせだとどうだったかというと・・・・
1998年に大学野球選手12名に8週間、
- 週に2回フリーウェイトトレーニング
- 別の日に週に2回ケーブルプーリーによる投球動作に対して負荷をかけるトレーニング
をおこなわせ、さらに徐々にトレーニング負荷を高くしていき、遠投プログラムも実施!
一方別のグループには遠投プログラムのみを実施したところ、遠投のみ行ったグルーブは速度の向上は見られず、いろいろなトレーニングを組み合わせたグループは平均して時速2.72km速度が向上したそうです!
もうひとつ特異的なトレーニングと一般的な筋トレの組み合わせの実験を紹介します。
高校生の野球選手11名に
- 一般的な筋トレ
- 40%ほど重いボールと普通のボールを2対1の比率で投球するトレーニング
を週6回8週間おこなわせたところ・・・・・
スピードの向上は見られなかったそうです!(^^;
重いボール投げても、あまり効果ってないようなんですよね・・・・
それに比べてケーブルで引くトレーニングは比較的スピード向上の割合が高いように思います。
これらの傾向を見ると、筋トレと瞬発的なトレーニングとケーブルプーリー系の組み合わせが一番成功率が高いように思うのは僕だけでしょうか?
投球スピードの向上は、まだメカニズム的に完全に解明されているとは言い難いのが現実です。
