皆さんこんにちは
パーソナルトレーナーの野上です
今回はスピードアップに最も適したトレーニングは?っていうテーマでお届けさせていただこうと思います。
まずははみなさんとのやりとりをご紹介したいと思います。
今日ご紹介するのは、このようなやり取りでした。



また極端な話ですが、トップスピードの向上だけを狙っているのであればストライドを広くさせるようなトレーニングをした方がウエイトトレーニングをするよりも効率が良いのでしょうか?

ちなみに、この記事というのはジャンプ力向上のためにスクワットやデッドリフトを行うのはいいですが、それだけではダメでクリーンなどの爆発的エクササイズを行いましょうという記事でした。
この質問を要約すると、ジャンプ力向上のための筋トレ+スプリントのトレーニングを行うと、トップスピードも向上するのか?というご質問です。
このご質問に対して僕は「そのトレーニングは加速に対する貢献の方が大きい」と答えさせていただきました。
そしてあくまでトップスピードのレベルを上げたければ、ストライドを大きくするようなトレーニングの方がいいとも答えさせていただきました。
スピードアップに最も適したトレーニングは?
筋トレは加速の為のトレーニングな理由
ウエイトトレーニングというのは、そのままスバリ「力」を向上させるトレーニングです。
スプリントの時に最も「力」が必要なのは「加速時」になります。
数十Kgの物体を瞬時に時速0Kmから時速30Km以上に加速させるのに必要なのは純粋に「力」が必要になるのです。
そしてクリーンなどの爆発的なエクササイズで鍛えられるのは「瞬発力」です。
「瞬発力」も当然、瞬間的に重量物を移動させるのに必要な能力です。
なのでこれらウェイトトレーニングやクリーンなどのエクササイズは全て「加速時」に必要な能力を鍛えるトレーニングなのです。
また、もう一つ重要なのは、スクワット・デッドリフト、そしてクリーンで鍛えられているのは「股関節伸展筋群」です。
簡単に言えば足を後ろに蹴る方向の筋肉が鍛えられます。
そう、・・・・後ろに蹴る方向にです。
「後ろに蹴る力が必要なシーン」もこれは「加速」の時なんです!
しかし「トップスピード」の向上において特に重要なのは、後方へのキック力もさることながら「いかに後方に蹴った足を素早く前方に降り戻せるか?」が、とても重要になります。
スプリント選手のタイプにも大きく2種類あって「ピッチ」で走るタイプの選手と「ストライド」を大きくとって走る選手に分けられるともいます。
かのボルト選手は明らかに「ストライド」の選手です。
先のオリンビックで金メダルを取った時も、そのスロー映像を見ると、他の選手とは明らかにストライドの量が桁違いに広いことがわかります。
こういうタイプの選手は加速時があまり得意ではなくスピードが乗ってきた後半に伸びる選手が多いように思います。(もちろんそうでない選手もいますが・・)
このストライドを広くする際には足をいかに素早く、そして高く戻せるかがキーポイントになります。
「トップスピードの向上」の為のトレーニング
足をいかに素早く戻すためのトレーニング・・・・
「トップスピードの向上」には通常アシステッドスプリントというトレーニング法が用いられます。
これは、スプリントをアシストする・・つまり下り坂をトップスピートで走ったり、誰かに引っ張って走ったりするトレーニングです。
これにより通常よりも速い回転ピッチや、長いストライドを身体に身につけさせるトレーニングになります。
足も素早く戻さなければなりません。
そう「ウェイトトレーニング」どころか、むしろ逆に
- 「走る負担を軽く」して
- 「いつもよりも速く走れるようにする」トレーニング
がトップスピード向上のためのトレーニングの中心になるのです(^^)
簡単にまとめると・・・・
- 「負荷をかけたトレーニングは「加速力向上」のため、
- 「走る負担を軽く」して「いつもよりも速く走れるようにする」トレーニングは、トップスピード向上のため
のトレーニングと理解してください(^^)
「 ジャンプ系トレーニングって水平方向のスピードアップに有効?」
トレーニングには色々な種類のトレーニングがあります。
ミニコーンやラダー(はしご)をグランドにおいて、いろいろ素早く動くトレーニングをSAQトレーニング、
バーベルなどを使って重い重さで筋トレすることをレジスタンストレーニング、
クリーンやジャークなど瞬間的にバーベルをあげるトレーニングを爆発的エクササイズ、
といろいろなあります。
そして「各種ジャンプ系トレーニング」のことを概ね「プライオメトリックトレーニング」といいます!
ジャンプ系トレーニングの目的は「筋肉が瞬間的に素早く動く能力」を向上させることです。
もうすこしだけ、専門用語を使わせていただくとこれは「SSC」という能力向上をさします。
「ストレッチ(伸びる)、ショートニング(縮む)、サイクル」の略で、筋肉の瞬間的な伸び縮みの能力という意味です。
ジャンプするときは、一瞬身体を沈みこませると思いますが、この予備的動作で、いろいろな筋肉が「予め」伸ばされます。
そして、そのあとすぐに「瞬間的に」「予め伸ばしていた筋肉を縮めて」ジャンプします!
そして着地の時にまた、筋肉が予備動作と同じように伸ばされます。
これを、繰り返して行って、筋肉の伸び縮みの能力を向上させようとするものなのです。
プイオメトリックトレーニングの効果
プライオメトリックトレーニングは、スプリントの場合の「ストライド長」を長くする効果があります。
また、特に最初の「10mの加速時にとくに好影響」をもたらすことがわかっています。
また、よくいう「競技特異性」・・つまり、その競技独特の動きや筋肉の使い方は、プライオメトリックトレーニングにも当てはまります。
どういうことかというと、ただ漫然と両足でおこなうジャンプトレーニングよりは、片足ずつ大股で大きくジャンプしながら前方に移動する「オルタネットレッグバウンディグ」と言うトレーニングがあるのですが、
こういうトレーニングは、両足でジャンプしたあと素早く足を胸に引き寄せる「レッグホップ」といったトレーニングより、走る動作に近い瞬間的な動きをするのでスプリント能力の向上に役立ちます。
ただし、気をつけなければいけないのはプライオメトリックトレーニングは身体にとても強い負荷がかかります。
ちょっとびっくりするかもしれないですが、へたなバーベルでのスクワットより、プライオメトリックトレーニングの方が体にかかる負荷が大きいケースが多いのです。
プライオメトリックトレーニングを行うのに、実は身体的な基準が存在します。
下半身のプライオメトリックトレーニングを行うには
- 自分の体重の2~2.5倍のマシンでのレッグプレスか、体重の1.5倍の重さのバーベルスクワットができているくらいの筋力が必要です
上半身のプライオメトリックトレーニングを行うには、
- 自分の体重と同じくらいの重量をベンチプレスであげられなければなりません。
つまり、この重さまでのバーベル系エクササイズの方がプライオメトリックトレーニングより身体への負担が少ないということでもあります。
体重60kgの男性が80kgのバーベルスクワットをやる方が、ジャンプ系トレーニングをやるより身体への負担が少ないなんてちょっとイメージわかない方が多いと思いますが、それくらい「瞬間的に負荷をかける」ということは、想像以上に負荷がかかるんです。
バーベルでのスクワットはあんまりできないけど、雨の日の校内でやる陸トレで連続スクワットジャンプやってますという方、すくなくないのではないでしょうか?
そういう方は、体にとても負荷がかかっていると思っていただいた方がいいです!
ヒップスラストとスピードアップとの関係
ヒップスラスト(Hip Thrust)と聞いて、すぐに種目が頭に浮かぶ方は、最近流行りの筋トレ女子のユーチューブの筋トレ動画などをチェックされている方だと思います。
ここ2年くらいで瞬く間に広がった種目ですね(^^)
バーベルを股関節前部に置き、上半身をベンチ台の上に置いて仰向けに寝ながら、骨盤を上下させるエクササイズです。
まさに筋トレ女子のユーチューバー御用達のこの種目ですが、今日は、この種目がスポーツのスピードアップのために役立つのか?
これですね・・・・おすすめなんですよ!(^^)
いやいや、ほんと、マジで!!(^^)
足腰を鍛える筋トレの種目として代表的なのは、スクワットやデッドリフト ・・そして、クリーンと言った爆発的にバーベルをあげる種目があります。
これらの種目は基本的に「両足」で「垂直方向」にトレーニングをする種目です。
そもそも、ちょっと疑問に思いませんか?
「垂直方向」への筋トレをして、「水平方向」へのスピードが向上するのか?と・・
もちろん全く効果がないなんてことはないのですが・・・
これ、色々と研究がされているんです。
そして、それらの研究をまとめて説明すると、いくつかの研究では
- 確かに垂直方向のトレーニングは、水平方向のスピード向上に効果があった
としています。
しかし、その効果が出た人たちにはある傾向があったそうです。それは、
- スピードレベルがレクリェーションレベルである
ということです。
つまり、上級アスリートを対象とした場合、垂直方向の筋トレのバフォーマンスの向上が水平方向のスピードに変換される割合はかなり少ないということなんです。
まあ上級アスリートの場合、そもそもの基礎体力がすでにできているという側面もあります。
そして、上級アスリートの場合、より「水平方向に動いた時の身体の動きにあった筋トレ」をする必要があると示唆されています。
そして、ここで上げられるのが「ヒップスラスト」なんです。
もう一度写真を見てみましょう。
一見ヒップスラストも垂直方向へのエクササイズのように見えますが、大きく違うのは「身体が仰向けで寝ている」という点です。
これに対して股関節前部から負荷をかけ、大腿部が「身体の後ろに行く」時に負荷をかけています。
これは、実は「水平方向」へのダッシュの時の足の動きに負荷をかけていることになるのです。
実際のヒップスラストとスクワットの筋電図の比較をしたデータだと、
- 大臀筋上部の平均 69.5%対29.4%
- 大臀筋上部ピーク 172%対84.9%
- 大臀筋下部平均 86.8%対45.4%
- 大臀筋下部ピーク 216%対130%
- 大腿二頭筋平均 40.8%対14.9%
- 大腿二頭筋ピーク 86.9%対37.5%
と、大臀筋と大腿二頭筋という、水平方向にダッシュするときに最も使われる筋肉への負荷が、スクワットとは段違いでヒップスラストの方がかかっていることがわかります。
水平方向へのスピードアップのために筋トレをしているという方は、スクワットやデッドリフトを行いつつ、この「ヒップスラスト」もぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか?
ちなみに、僕もスタジオレッスンで音楽に合わせてバーベルを使ってトレーニングするクラスを持っていますが、このヒップスラストは毎回必ず行う種目です。
もう、毎回お尻からハムストリングスが悲鳴をあげるくらいめっちゃ効きます!
流行りだけのエクササイズではなく、しっかり効果もありますので、よろしければ是非ご参考にしてください(^^)
ではでは!