皆さんこんにちは!
パーソナルトレーナーの野上です
今日は「格闘家のダイエットの基本的な流れについて」というテーマでお届けしたいと思います。
僕自身もトレーナーとして同じくK-1系の選手の試合に向けた減量に携わったことがありますが、その減量はボディビルターやフィジーカーの減量とは色々と違うところがあります。
今日は、その両者の違いについて色々とお話ししたいと思います。
格闘家の減量の目的は何か?
もちろんリミットまで体重を落とすことが最初の目的ではありますが、それが最終的な目的ではありません。
格闘家の減量の目的は「相手に勝てる身体を作る」ことを目標にしながら体重を落とすことです。
この点がビルダーやフィジーカーの減量と大きく違うところです。
ビルダーやフィジーカーは「いかに筋肉を落とさず脂肪を落とすか?」に注力します。
しかし格闘家は「筋肉を残せば勝てる」というほど勝負は簡単ではありません。
格闘家の減量は「相手に勝つ」ための減量をします。
そのため時には筋肉を落とすことすらいといません。
なぜ筋肉を落としても勝てるのかというと、格闘家の減量は計量日が一日前にあることがポイントです。
その日のために筋肉すら落としても「1日で体重をリカバー」できるのです。
このリカバーがすごくて、階級にもよりますが、5kg〜7〜8kgを一日で戻してしまえることもあります。
え・・・1日でそんなに体重が変わるの?
と思われるかもしれませんが、ここがポイントです。
ウチのジムにいたK1選手の寺島くんの例で言えば、軽量2日前までであと3kgと言っていました。
2日で3kgというと、普通の人はびっくりするかもしれませんが僕は彼に「めちゃくちゃ順調だね! もう余裕でいけるでしょ」と言っていたら彼も「余裕です」と言っていました。
格闘家の減量とはこういうものなのです。
「ディプリート(Depletion)」
これはどんなことかというと、「糖質を完全にカット」する日を設ける事を言います。「カーボディプリート」とも言いますね。
糖質をそこまで制限するには、いくつかの理由があります。
まず最初の目的はもちろん「脂肪を落とす」ためです。
脂肪を極限まで落とすという意味では、フィジークやボディビルも同じなので、この手法は格闘家のみならず、ビルダーやフィジーカーでも当たり前のように使われるテクニックです。
糖質を完全にカットすれば、脂肪をエネルギーにしなければ身体は動かなくなるので、脂肪をとにかく落としたいという時期には使われるテクニックなのですが、何事も「計画」が大切です。
これをやみくもに行うと「筋肉」まで必要以上落ちてしまいますし、格闘家であれば「練習に必要なエネルギー」も枯渇してしまうので、練習の「質」が落ちます。
なので、ディプリートは「散発的」に行うことが大切です。
1週間に1日とか、やっても2日間だけにして行われる事が多いです。
そのあとに糖質を補給して、必要以上に身体にダメージが蓄積する事を防がなければいけません。
また、もう一つ行われるテクニックに「チート」と呼ばれるテクニックがあります。
「チート」
これは「あえて食べる日を設ける」のです。
減量中は食べちゃ駄目なんじゃないの?
と思われるかもしれませんが、僕の経験上これが結構「落ちる」のです。
というのも人間そんなに我慢が続くわけではありません。
以前うちのジムに在籍していたフィジークのチャンピオンだった選手が、試合前に「今絶世の美女が裸で目の前に立っていても、その後ろに食品棚があったら、迷わずその女性を押しのけて僕は食べ物を食べます!」と言っていました(^^;
その選手曰く「女の人がいなくても死にはしませんが、食べ物がないと人は死んでしまいます」と、餓えたギラギラした目で言っていたのを今でもはっきり覚えています(^^;
まあ、そんな選手の心の拠り所が「チート」なのですが、これ減量的にも実はある程度理にかなっています。
カロリーをたくさん入れると太るのでは?と思われると思いますが、脂肪を燃焼させるためには「身体を動かすエネルギー」が必要なのも事実です。
身体はあまりにも体内のエネルギーが枯渇すると生存維持のためにエネルギーをあまり燃やさなくなってしまうのです。
このエネルギーを定期的に入れてあげることは精神的にも肉体的にもとても重要なことなのです。
先ほどのディブリートをずっと続けないのは、実はこの「エネルギーの枯渇」を防ぐためにも大切なことだからです。
チートを入れるのは減量中であれば、減量初〜中期は1ヶ月に1〜2回、試合月は計量2〜3週間前に1回だけ入れるくらいになります。
そしてディプリートはその倍の数を入れるくらいのケースが多いのではないかと思います。
また、試合前1週間くらいにわざとディプリートを2〜3日間入れて糖質を完全に枯渇させた後、糖質を補給して、筋肉に糖質を吸収させて筋肉を張らせたり(カーボアップ)、エネルギーを充満させる(カーボローディング)させるテクニックもあります。
トレーニングはずっと同じことを続けていると「慣れによるオーバートレーニング」状態に陥り効果が出なくなることもありますが、減量も「同じことを続けていては駄目」なのです。
ぜひ「飴と鞭」を使い分けてご自身のダイエットにお役立てください!
試合直近になったら
塩抜き
最後に3kg落とすには「塩」を抜いていきます。
これだけで1〜2kgストンと落ちます。
というのも塩は身体に水分を含ませるので、食事や水分から塩を抜くとそれだけでこれくらいは落ちてしまうのです。
水抜き
あとは軽量日の午前中にサウナに入って「水」だけで1〜2kg落とします。
これも普段の練習から練習前と後で汗でどれくらい体重が落ちるのか?を測っていれば簡単にいけます。
例えば普段2時間の練習で1kgくらい落ちいてるのだとすれば、計量前に2時間サウナに入っていたら同じくらいは落ちるものです。
1回のトレーニングで落ちる体重はそのほとんどが「水」であるため、同じ時間サウナに入っていても体重が落ちるペースはそれほど普段と変わることはありません。
もちろん1回のトレーニングでそれ以上落ちていればより体重が落ちる量は多く見込めます。
僕が見ていた選手は1回のトレーニングで1.5kg落ちていたので軽量日の朝であと1.5kgであればいける計算でした。
なので3日前までであと3kgなら「余裕」なのです。
そして計量後は1日で水分と塩分を補給して3〜4kg戻して、さらに糖質・炭水化物を目一杯とって、2kgくらい戻せば余裕で5kg多い体重で試合にのぞめます。
格闘技は「リミット体重から試合までいかに体重を多くできるのか?」がポイントであり、体重が多ければ多いほど非常に有利になります。
よく格闘技の試合で、あれ?同じ階級なのに体つきが全然違うんだけど・・と思う時があるかもですが、それはこの「リカバー」が違うと思っていただいて良いと思います。
格闘家の減量は、時に筋肉を落としてもいいというくらい減量をします。
その点はボディビルやフィジークと明らかに違うのですが、それは「前日計量」により試合までに「1日時間がある」ことを利用した「リカバー」がいかにできるかが、試合の優勢に大きく影響を与えるのです
トレーニングの内容
同じように極限の減量を行う、ボディビルダーやフィジーカーと、格闘家のトレーニングには明らかに違いがあります。
それは競技が違うから当然と言われるかもしれませんが、それを差し引いても、いろいろな面で違うのです。
ボディビルダーやフィジーカーのトレーニング
ボディビルダーやフィジーカーは、当然のことですがトレーニングの内容は筋トレが中心になります。
その筋トレの内容ですが、体重が減っていけばいくほど使用重量というのは上がらなくなっていくものです。
そのため、
- 中低重量
- 高回数
- 高セット
になっていく傾向にあります。
そして、減量していくとどうしても自分の「弱点」が見えてきてしまうので、そこをできるだけ補完しようと、種目も増えていく傾向にあります。
また、インターバルの時間もどんどん短くなっていく傾向にあります。
重量で筋肉に刺激を与えることができないので、回数・セット数・そしてインターバルを短くすることによって筋肉を追い込んでいき、負荷をかけていくのです。
つまりこれはどういうことか?
そう、トレーニングの「量」が非常に多くなっていくのです。
高重量低回数のトレーニングというのは、インターバルも長い傾向にあるので、同じ時間トレーニングしていてもトレーニングの「量」というのは少ないものです。
それに対して、低重量・高回数・短インターバルのトレーニングは一定時間の間で行える量は多くなります。
このトレーニングの「量」によって消費カロリーを稼いでいくのです。
格闘家のトレーニング
それに対して、格闘家の筋トレは真逆になっていきます。
使用重量は重く、回数は少なく・・・そして疲労を残さないためにセット数も少なくします。
そしてもう一つ、筋トレの動作スピードをできるだけ「速く」行うようにします。
これは「テーパリング」と言われる技術です。
つまり疲労を残さず試合では高出力を発揮しなければならないのでトレーニングの「質」をどんどん高めるようにする技術です。
「でも、トレーニングの量が少ないから、消費カロリーが少なくなって体重が落ちないんじゃないの?」と思われるかもですが、それは別の運動でまかないます。
それは・・・皆さんご存知「有酸素運動」です。
実は意外かもしれませんが、ビルダーやフィジィーカーというのは、減量のための運動として、有酸素運動を行う割合は多くありません。
というか、ほとんどそれに頼りません。
ビルダーが走り込んでいる・・・なんて見たことある方いないと思います。
これは、その時間があったら「筋トレ」に当てるからです。
また有酸素運動によって、筋肉を栄養として分解させるカタボリックを極力少なくしたいという思いもあるからです。
これに対して、格闘家はめっちゃ有酸素運動をします。
なぜなら試合はほぼ有酸素運動だからです。
肝心の試合でスタミナ切れになんかなってしまったら、相手に勝つことはできまん。
なので格闘家はひたすら走り込んで痩せるという選手がほとんどです。
同じように体重を落とす競技でも、トレーニングの内容は両者で全然違うのがわかると思います。
自分はどちらのタイプで体重を落としたいのか?
ぜひご自身のタイプに合わせてご参考にしてください(^^)