皆さんこんにちは!
パーソナルトレーナーの野上です
今日は「筋肉に意識を集中するのは、本当にいいこと?」というテーマでお話ししようと思います!
まず、ウェイトトレーニングの現場の基本に、「漫然とトレーニングするのではなく、使っている筋肉に意識を集中して行いましょう」という指導があります。
これは、「トレーニングの意識性」という、もうトレーニングの本には必ず書かれている原理原則なのですが、今日はこれについてちょっとお話ししようかなと思います。
まず、ある動作をしているときに「意識」を、この表現のように「内的」に向けさせるのか、それとも逆に「外的」にむけさせるのか・・・
例えば「バーを速くあげよう」という「外的」にむけさせるのか?という問題があるんです。
筋肉に意識を向けて筋トレ
競技中の選手は、自分で意識をどのように集中してプレーするかということを、自分で選択したり学習するのではなくどちらかといえばコーチからの指示に基づいて意識や注意点を集中することが多いそうです。
だから、コーチが、練習中や試合中も言葉掛けを効果的に用いることによりアスリートに適切な注意の集中を促すのはとても大事なことなんです!
これは、コーチングのテクニックなのですが、例えばダッシュするときも、コーチが「お尻の筋肉を使うようにしろ!」と掛け声をかけるのか(これは内的)、「地面をおもいっきりスパイクで素早く引っ掻くように走れ!」という指示を出すのか(これは外的)で、競技パフォーマンスに明確なタイム差が出ます
トレーニングの意識性の原則からいうと「内的」に指示をうけたほうが良さそうですが、じつは「外的」な指示を受けた方が、はるかにタイムはいいのです!
ん?、じゃあトレーニングの意識性って何?
って話になりますよね(笑)
レジスタンストレーニングではアームカールの時に、バーベルをあげることだけに意識を集中した時と、上腕二頭筋に意識を集中した場合とを比較したデータがあります。
筋肉に筋電図をつけて計測したところ、挙上重量は、「バーベルを上げることだけに集中しているとき」のほうが
- 重い重量をあげられた
- 筋肉の活動は少なく済んだ
そうです。
ん? 筋肉の活動は少なく済んだ?
これは意識を体の内面にむけるより、外に向けたほうが、筋肉をたくさん使わなくても高いパフオーマンスは発揮できる事を示しています
ここに、二つの注目すべきポイントがあります。
それは
- 「重い重さを使える」点
- 「筋肉の動員量が少ない」点
です。
筋肉を大きくしたい場合が目的の場合は、「挙上重量」が重いほうが、筋肉は太くなりやすい側面があります。
そして、もう一つに「筋繊維の動員量」が多いほうが、筋肉は太くなりやすいのです。
重い重さを使えるけ動員量は少ない・・・
じやあ、どうすれば?、と思われる方も多いと思いのますが、これらは色々整理して考えればOKです。
セットの目的ごとに「意識」を変える
1〜3回しか上がらない重さで挙上するトレーニングの目的は「筋力アップ」です。
6〜12回しか上がらない重さで挙上するトレーニングの目的は「筋肥大」になります。
つまり、ベンチプレスなどで、挙上重量をあげていく「筋力アップ」がトレーニングの目的の場合、MAXに近い重量でのトレーニングの際は「あえて」「筋肉への意識をやめて」バーベルをとにかくあげることに意識をむけます。
そして、「筋肥大」が目的のセット、つまり6〜12回でトレーニングを行う際は「あえて」「胸の筋肉をできるだけ使ってあげよう!」と筋肉に(内的に)意識をむけてトレーニングしたほうが筋繊維の動員量が高くなり、筋肥大に効果的です!
このようにトレーニングの使用重量や回数だけでなく、セットごとの使用重量とその目的を変えて、さらにセットごとの「意識の持っていき方」も変えると、漫然とトレーニングするよりもはるかに効果的なのです
ちなみに、これはベンチプレスに限らず全ての筋肉のトレーニングに通じます。
ただし、この意識の変え方は、基本エクササイズである、ベンチプレス、スクワット、ベントオーバーローイング、ラットプルダウン、デッドリフト、ショルダープレス、アームカールなどの種目で行う方がいいでしよう。
例えば、ダンベルフライ、やサイドレイズなどのダンベル系の種目は、バーベルの基本種目と違い「筋肉への効き」が重要視されます。
これらの種目を行う場合は筋肉を使おう!(内的な意識むけ)を意識しながら行う方が良いです
筋トレはその目的によって「筋肉への意識の向け方」も使い分けるようにしてください(^^)
各種トレーニング時の意識の向け方
では次にジャンプ系トレーニング、持久系トレーニング、アジリティ(敏捷性)トレーニングではどうか? という点でいろいろとご紹介したいと思います。
長距離においての意識
まず持久的エクササイズですが、これは筋持久力と心肺持久力にわけてご紹介します。
筋持久力
まず筋持久力についてですが、あるデータでは、75%1RM、つまりマックスの重量の75%の重量でスクワットとベンチプレスの回数を測ったところ
- 筋肉に意識をむけているより、筋肉(内的)に意識をむけないでバーをただあげるだけ(外的)に意識をむけるほうが、挙上回数は優位に多くなる
というデータがあります。
筋持久力のトレーニングとは、筋肥大そのものを目的とするのではなくむしろ実施時間をどれだけ長く行えるかが一つのポイントになります。
回数を向上させよう、プレー時間を長くしよう!
という目的でハイレップ(高回数)トレーニングをする場合は、あえて筋肉に意識をむけないでいた方が回数をより多くこなせます。
つまり持久力向上を目指せるということになります。
心肺持久力
次に長距離走のような心肺持久力についても実は同じです。
この場合は筋肉というより、息継ぎや走法といった部分に注意をむけて走るより、(これも意識は内向きとされる)、周囲の状況などに気を配って走った方が酸素消費量の効率はよかったというデータがあります。
これはですね・・・・
実際のレースでは、「体幹を使って走ろう」「骨盤を前傾して走ろう」「姿勢は・・・」ということを気にしない方がいいということになります。
もちろんこれらを気にするのは大事なことですが、それはあくまで「練習の時に完成させておく!」もので(だから「練習」ともいう)、本番での意識づけは別のところ、つまり「身体と対話しない」ようにした方がいいということになります。
それよりも、周囲のランナーとの駆け引きやコース状況、気温、水分補給などできるだけ外に意識を向けた方がエネルギー効率的にもいいということを示唆しています。
・・・・興味深いですよねえ(笑)
ジャンプ系についての意識
ジャンプ系については、内的な意識(膝を早く伸展しよう!という感じ)はもとより、ニュートラルな意識・・
例えば自分のベストのジャンプをしよう!という意識よりはっきりと「あそこまで飛ぼう!」というように意識した方がパフォーマンスは高いそうです。
アジリティ(敏捷性)のパフォマンスレポートを示すLテストをした場合も同様です。
意識を「足をできるだけ早く動かすように」という内的指示や「最大の努力で走りなさい」というニュートラルな意識より、「できるだけ早く「コーンに向かって走り、向きを変えるときは地面を強く蹴りなさい!!」という外に意識を向けさせる(この場合目標物)方が優位にタイムが早かったそうです。
つまり、スポーツの「試合」の時には少なくともプレー中は、意識は「フォーム」や「筋肉の使い方」などのような内的に意識をもって行ってはいけません。
「外に意識を集中」してプレーする方が高いパフォーマンスを発揮できるのです。
それら内向きの意識づけはあくまで「練習段階」で完成させておくことが大事という事です。
また、持久系の種目に関しては、そもそも「長く行う」ことに意義があるので、こういう練習をする場合は「やれた時間」がもっとも大事な要素になります。
この場合筋肉にどれだけ効いたかということが最大の目的ではないので、意識はできるだけ外にむけておくべきだと言えます。
プレー中に「身体と対話」する方たくさんいらっしゃると思いますが、それは「ケースバイケース」で行わなければなりません。
「筋肉の力」をスムーズに発揮するために!
珍しく、YouTubeのコメント欄にいただいたご質問をご紹介したいと思います。
僕のこのYouTubeの動画に対して
YouTube動画 「筋肉に意識を向ける」は本当に正しいのか?

ところで、挙上重量は上がるのに筋肉にかかる負荷が軽くなるということは、何の力で上げているのでしょうか?
いつもご覧いただきありがとうございます(^^)

というものでした(^^)
この動画では、筋トレの際に筋肉に意識を向けるのは「筋肉を大きくしたい」という目的で筋トレをーする場合は有効ですというお話しをしています。
そして、1回ギリギリ上がる挙上重量の記録をさらに伸ばしたい・・・
いわゆる「マックス」に挑戦するような場合は、逆に筋肉を使おうと意識しないほうが、記録は良いというお話をしています。
つまり意識を「内的」に向けるのか「外的」に向けるのか?の効果の違いについて述べています。
そして、この動画の中では、前のページても言っているマックスの記録挑戦の時に、筋肉に意識を向けない方が記録が伸びるのみならず、筋電図によると筋肉への刺激が低いことを述べています。
この点について、上記のご質問が来たわけです。
でですね・・・・何の力か?・・と言われるとちょっと答えに困ってしまうんですよね(^^;
そこはやっぱり「筋肉の力」と言わざるを得ないのですが(^^;
でも筋電図で測ると、筋肉に意識を向けない方が、筋電図の値は確かに低い・・・
でも高重量は上がっている・・・・
矛盾してますよね(^^;
これですね・・・・この部分についてメスを入れている文献を僕は目にしたことがありません。
筋電図の結果はあくまで諸処の研究論文の結果を述べているだけなので「なぜそうなのか?」について書かれている書籍や研究は目にしていません。
なのでここから先は完全に個人的な見解であることを先に述べておきます。
個人的な見解ですが・・・
まず、一つ言えることは、この意識の「内的」「外的」な向け方の効果の違いとは、何も筋トレだけに限ったことではないんです。
前のヘージでいくつか書きましたが、全速力で走る時なども、「大腿四頭筋をめっちゃ使おう」と意識して走るより(内的)、「何も考えないで走る」ほうか大抵の場合速く走れます。
もしくは「地面をできるだけ素早く引っ掻くように走る」と言った意識の向け方(外的)の方が速く走れます。
では、この時に筋電図を足につけたらどうなるでしょう?
あくまで予想ですが、大腿四頭筋に関しては当然「意識して」走った方が筋電図での値は高くなっているでしょう。
でもそれではスピードは出ない・・・・なぜか?
これはですね・・・筋肉は「力が入って入れば強い出力が出るわけではない」というところにポイントがあると思います。
筋肉とは細胞レベルでは「刀」が「鞘」に収まるような構造になっていて、刀が鞘に収まる状態になる時に筋肉の長さを縮め「力」を発揮します。
この筋肉の長さが筋繊維の収縮により短縮する時に「あまりに力が入っているとスムーズに短縮しない」ことが考えられます。
簡単にいうと「ガチガチ」の状態だと思っていただけるとわかりやすいのではないでしょうか?
筋肉がガチガチでは、筋肉ってスムーズに動かないですよね?
でも筋肉単体では確かに力が入っている・・・
この状態を想像していただけると何となくわかっていただけると思います。
非常に重いものをあげている時も「動き」であることに変わりはありません。
意識を筋肉に向けると筋肉には確かに力が入るのですが、俗にいう「固くなって」動きそのものは渋い・・・
渋い動きでは、最終的な「出力」やスピードを伴った「パワー」のスコアは低くなる・・・
と思っていただければいいと思います。
大きな出力やパワーを発揮したいときはガチガチに筋肉に力を入れるより「多少抜けている」方が筋肉はスムーズに動きます。
結果発揮できるパワーは高くなるので、あえて「筋肉に意識を向けない」方がマックスのスコアも高くなる・・
そんな風に僕は思っています。
確かに「何の力であげているのか?」と言われたら「筋肉の力であげている」のですが、それを「スムーズに動かす」ためにあえて筋肉に対して意識を「少し抜く」方が、出力が上がるケースがあるのです。
ちょっと難しいかもしれませんが、これが僕にできる精一杯の答えです(^^;
色々書きましたが、ぜひ、ご自身のトレーニングにお役立てください!
ではでは!