筋肉の痙攣(けいれん)を防ぐ
皆さんこんにちは!
パーソナルトレーナーの野上です
今日は「筋肉の痙攣」についてお話ししようと思います(^^)
「足がつる」・・・・という経験をされた方多いのではないでしょうか?
サッカーの試合でも終盤選手の足がつって、他の選手が足をストレッチするシーンはテレビでもよく見られる光景です。
僕のツイッターへのご質問でも「足がつりやすいのですがなんでですか?」というご質問は結構いただきます。
このご質問をいただくと僕は大抵「水分とミネラル不足、さらにウォーミングアップをしっかりと行うことと、練習の疲れを残さないことが大事です」と答えております
足が痙攣するメカニズム
・・・・・実はですね・・・・・
「足が痙攣するメカニズム」自体は、まだよくわかっていないようなんです!(^^;
しかし、足がつるというメカニズム自体を研究している歴史は割と古くなんと100年以上前から研究はされています!!
でも結局実際のところはよくわからない・・・で、現在に至っているようです。
ちなみに僕が答えている、水分不足、ミネラル(電解質)不足、疲労について「直接の原因ではない」ことを証明した研究があります。
まず、なんで水分が少ないと筋肉が痙攣するという説が現れたのかというと、これが100年以上前に出た説です。
これは鉱夫が大量の汗をかいて作業をしていると必ず筋肉の痙攣が起こったというところから推測されたそうです。
脱水とミネラル(電解質)のバランス異常によって痙攣が起こるというのは、これらの初期の事例報告が根拠になっています。
しかしそのあとの研究で、水分やミネラルの不足は筋肉の痙攣の発生を遅らせる効果はあるものの、直接的な原因ではないようだという結果が出ています
そもそも、汗をかくということから、環境的な条件・・・要するに汗をかくような暑熱条件は筋肉の痙攣と因果関係があるのか?ということも研究されています。
この結果から水分やミネラル不足が直接の原因ではないということがわかっているようです。
だって暑くて汗をかきっぱなしの環境に置かれる国は世界中にいくらでもあります。
日本にもサウナに長く入る方たくさんいますよね(^^)
そういった方々が必ず筋肉が痙攣するのか?・・・・と考えればわかりやすいですよね(^^;
なので汗が大量に出て水分が不足したり、汗に伴ってミネラルが大量に体外に出ることが筋肉の痙攣の直接的な原因にはなりえないと推察されているのです。
エビデンス
ここで広範囲な症例報告と逸話的なエビデンスをご紹介したいと思います。
アイアンマントライアスロン選手(210名)の痙攣発生率を調査した研究では、痙攣をした選手と、痙攣を起こさなかった選手の血中電解質濃度には、両者に違いは見られなかったそうです。(Schwellnus)
また同様に、痙攣を起こした選手と起こさなかった選手では、平均体重の減少・・・・
これはつまり脱水の指標になるのですがこの点でも同様に両者に違いは見られなかったそうです。
つまり「ナトリウムの減少と水分の減少が、直接の痙攣の原因」と断定できる研究はありません。
しかし競技中に痙攣を誘発させる他の要因の二つはこれらの研究で明らかになっています。
痙攣を起こしたグループとそうでないグループはレースの準備や出場経験に大きな差は見られなかったそうです。
そして痙攣をおこしたグループは明らかに速いペースでレースを走っていたそうです!
これによりトレーニング中の平均速度より速いレースペースの速度が、痙攣を誘発させる重要な危険因子であると結論付けられいます。
また痙攣を起こしたアスリートは過去1年間に痙攣を経験した割合が、経験しなかった割合よりはるかに高かったそうです。
その比率、実に82.9%:45.5%という結果が出ています。
別の研究でウルトラマラソンの選手(49名)を調査した研究でも、トレーニングしている時より速いペースでレースを行う事と、過去の痙攣の経験がレース中の痙攣の発生と大きく関係しているということを結論付けています。
まず筋肉の痙攣を起こしたくないという方は、トレーニングとレースのスピード差が出ないように普段のトレーニングから気をつけることが大事です。
痙攣の罹患率は一度なってしまったものはもうどうにもならないので、この点に注意を払うことはできません。
なので普段のトレーニングと調整がとても大事ということになります。
水分不足、ミネラル(電解質)不足、疲労について
僕が答えている、水分不足、ミネラル(電解質)不足、疲労について「直接の原因ではない」ことを証明した研究はあるということをご紹介しましたが・・・。
にもかかわらず僕がなぜ、「水分とミネラル不足、さらにウォーミングアップをしっかりと行うことと、練習の疲れを残さないことが大事です」と答えているのか?
サッカー選手は、試合中水分をめっちゃ補給しているのは、足か試合中つるのを避けるためではないのか?という事と共通しますが・・・・
まず、これらの研究は「直接の原因ではない」ということの証明です。
しかし別の研究がありまして、その研究によると、水分とミネラルを補給していると「筋肉の痙攣の発症を遅らせる」ことは証明されているのです!
どんな研究だったのかというと、大学生年齢13名を対象にした実験で、インクライントレッドミル(傾斜をつけたランニングマシーン)に、爪先立ちでウォーキングを断続的に行います。
その間にスタンディングカーフレイズ、縄跳び、デブスジャンプ、リカンベントバイク、およびキックターンを行わせたそうです。
・・・・拷問みたいですけどそりゃそうですね・・・・
足をつらそうとさせる実験なんですから(^^;
この実験は、同じ13人に、実験中に飲水を許さなかった場合と、糖質・電解質飲料(この場合は「ゲータレイド」だったそうです)を飲料を許された場合と比較したようです・・・
・・・・って足がつるまでのトレーニングを2回もやらされたんですね(^^;
・・・ちょっとかわいそう・・・(^^;
で、結果はどうだったのかというと、まずゲータレイドを飲んでいない場合、足が痙攣したのは13名中7名・・・・
ゲータレイド飲み放題の場合(親しみやすいようにこう呼びます(^^) )は、13名中9名・・・・
あれ? 水分・ミネラル補給している方が多い・・・・
いや(笑)、この実験結果はそこを見るのではなく、別の視点が大事だとされています。
まずゲータレイド飲み放題の方が、足の痙攣が起きるまで明らかに時間がかかったそうです。
その差は実に150%に及んだとか・・・
この結果から研究者は脱水と電解質の不足(ミネラルの不足)は、筋肉の痙攣の直接の原因である可能性は低いが、運動中に糖質と電解質を補給することにより、足が痙攣するまでの時間は延長される可能性が高いと結論づけられたそうです。
サッカー選手が試合中頻繁に水分補給しているのにはちゃんと意味があったんですね(^^)
そして、もう一つこの実験で注目すべきポイントは、脱水時に痙攣を起こした7名全員がゲータレイド飲み放題の時にも痙攣を起こしたそうです
・・・・痛そうだ(^^;・・・しかも2回も(^^;
これは前のページで述べた「痙攣を起こしたアスリートは、過去1年間に痙攣を経験した割合が、経験しなかった割合よりはるかに高かったそうです。その比率、実に82.9%:45.5%という結果が出ています。」
・・・・とも符合しますね。
もし部活で、足がつる癖がある方は、水分&ミネラルを補給し痙攣が起きるまでの時間を長くしてあげましょう。
しかしでは、何が原因なんだ?ということなんですが、メカニズム的な原因は「神経学的な原因」というのが、今のところ最も有力なようなんです。
「筋肉の痙攣について」有力説の紹介
「神経学的な原因」
筋肉は神経を通って「収縮しろ!」という電気的な伝達があって初めて収縮します。
神経的な原因というのは、何らかの原因で、このいわゆる筋肉を収縮させる信号が「入りっぱなし」になってしまうのでは?と言う推察です。
しかも脳からの指令というより、脊髄からの反射が原因では?と思われているようです。
どういうことかというと、「伸張反射」という反射があります。
筋肉は急激に伸ばすと反射的に急激に縮まろうとします。
ジャンプする前にしゃがんで勢いを作るのは、しゃがむ動作により急激に筋肉を伸ばして反射による筋肉の収縮を利用して勢い良くジャンプ動作につなげていくためです。
一般に言われる「反動を使う」という動作はもうほとんど「伸張反射を使っている」ということと同義語だと思っていただいて間違いありません。
この「伸張反射」は「脳」から指令が行くのではなく、筋肉が急に伸ばされたよ!という信号が「脊髄」に入り、そこからすぐに電気信号で「じゃ収縮して!」と半ば自動的に信号が送られるようなシステムになっています。
筋肉の痙攣は、この脊髄からの「じゃ収縮して!」の信号が行きっぱなしになるのが原因では?というのが有力説なんです。
なぜ筋肉が痙攣を起こした場合その場所を伸ばす「ストレッチ」をするのか?
ちょっと考えてみましょう。
「静的ストレッチは反動を使わずゆっくり伸ばしましょう!」と、よく言われますよね。
これは「反動」を使うと、伸張反射が起きて筋肉が収縮してしまうからです。
つまり「伸張反射」をともな伴わない「静的ストレッチ(スタティックストレッチ)」は、むしろ逆に「筋肉が急に伸びたよ」という指令を「緩和する働き」があります。
これは脊髄からの「じゃ筋肉収縮して!」という指令を出させなくする効果があると解釈してもらっていいと思います。
なので筋肉が痙攣している時には、その場所を伸ばして「脊髄からの筋肉の収縮指令」を緩和させるための「静的ストレッチ」が有効です!
そして有効であるからこそ「脊髄からの反射」が直接的な原因なんじゃね?
と思われているんです。
(ちょっと厳密に言うと、末梢起源説と中枢起源説では争いがある)
今は一応これが筋肉の痙攣の有力説となっています
筋肉がつる条件的な原因まとめ
その筋肉がつる条件とは、
- 過去に痙攣の経験があること
- レース前の受動的ストレッチの量が多いこと
- レースのペースが普段の練習より高いこと
- レース後の大腿四頭筋の筋肉痛が大きい場合
- 疲労
が挙げられています。
「レースのペースが普段の練習より高いこと」と「レース後の大腿四頭筋の筋肉痛が大きい場合」は、いわば筋肉に対しての負荷が強いことと同義語で、それは「疲労」にもつながることです。
そして、みなさんがちょっと「えっ?」と思われていると思うのが「レース前の受動的ストレッチの量が多いこと」だと思います。
これは推測ですが、受動的ストレッチ(スタティクストレッチ)を多く行うと「伸張反射」を起こすセンサーの感度が鈍ります。
ランニングは、脚部の「伸張反射」を有効利用した方が効率よく走れるものです。
この機能が鈍るため、反射ではなく「筋力」で走らなければならず、結果「筋肉の疲労」につながり、痙攣を起こしやすくすると考えられます。
また痙攣の特徴として、二関節筋に起こりやすい傾向にあります。
二関節筋とは、筋肉が二つの関節にまたがって走っている筋肉のことです。
ご紹介すると
- 上腕二頭筋 (肘関節と肩関節)
- 上腕三頭筋(肘関節と肩関節)
- 大腿二頭筋(長頭)坐骨結節と腓骨頭)
- 半膜様筋(坐骨結節と脛骨内側顆)
- 半腱様筋(坐骨結節と脛骨上部の内側面)
- 腓腹筋(膝関節と踵骨隆起)
- 大腿直筋(股関節と膝関節)
となります。(細かい筋肉は自分で調べてみてください(^^; )
また筋肉の痙攣が起きやすい人は、痙攣に対する閾値周波数が、痙攣を起こしにくい人より低いそうです。
閾値周波数とは、神経の興奮により痙攣が誘発される最小周波数のことです。
痙攣を起こしにくい人の閾値周波数は25Hzに対し、痙攣を起こしやすい人の周波数は15Hzだそうです。
簡単にまとめさせていただくと、痙攣を防ぐには、
- レース前の十分な水分とエネルギー(糖質・ミネラル)を補給しておくこと。
- レース直前の受動的ストレッチは避けること
- トレーニングで達成した以上にペースを上げすぎないこと
- 競技の前の週はテーバリング・・・いわゆる調整を厳密に行い疲労を残さないこと
・・・・・・・が大事です。
特に痙攣経験者は十分に気をつけることが大事です。
また今で一回も痙攣を経験したことがない人でも一回なると非常に再発率が高いですので気をつけてください。
そして万が一、痙攣に見舞われたら受動的ストレッチで対処しつつ、水分・ミネラル(電解質)を、素早く補給するようにしてください!
色々書きましたが、競技をしている方はよろしければご参考に(^^)
ではでは!