格闘技

【解説】広背筋が強いとなぜパンチ力が上がるのか?

格闘技選手のダイエットやトレーニング

広背筋が大きいとパンチ力が上がる?

皆さんこんにちは

パーソナルトレーナーの野上です

野上の著書 頭からつま先まですべてのコリと痛みをとる事典「史上最高のストレッチ」Amazonのサイトはこちらから

ボクシング漫画や、ロッキーのようなボクシング映画をみると「薪割り」をトレーニングに取り入れて「広背筋」を鍛え、強いパンチ力を養うというシーンがあります。

これ・・・ちょっと矛盾を感じませんか?

だってパンチを打つって、手を前に伸ばす動作です。

つまりベンチプレスやダンベルブレス、マシンで言えばチェストプレスといういわば「押す系」の種目とほぼ同様の動きになるわけです。

この時に使われる筋肉というのは、大胸筋、三角筋、上腕三頭筋の3つが使用されます。

あれ?・・・・広背筋や背中は?・・・・・

ちなみに、広背筋というのは腕を「引く」ときに使用される筋肉です(^^;

つまりパンチの動作と真逆の筋肉じゃん!ということになるんです。

じゃあ、広背筋はパンチ力に関係がないかというと・・・

そんなに単純でもないんです!(^^;

まず、ハードパンチャーというのはみんな背中の筋肉は発達しています。

打撃系の格闘技をしていると背中の筋肉も発達しやすいのは事実なんですが、これをあたかも「パンチを打つ時に使われているから発達している」と単純に考えてはいけません。

なぜ背中の筋肉が発達するのか?

以前SNSでいただいたご質問に「打撃系格闘技は、後背筋を使った押す力といわれ、事実背筋が発達しましす。しかし、ウエイトでは、押して背筋を鍛えるトレーニング方法が確立されていないのはなぜなのでしょうか?」というものがありました。

先程も書いたように広背筋は「引く」ときに使用される筋肉です。

したがって「広背筋を使った押す種目」というものはそもそも存在しません!

では、なぜ格闘家の広背筋は発達するのかというと、まず単純に「パンチを引く時には使われるから」です。

そりゃそうです!

パンチは「打つ」だけじゃなく「引く」動作もあって初めて「パンチ」という動作が成立します。

「引く」時は広背筋の出番です!

何万回も打っては引きをくり返していれば・・・

それも目一杯のスピードでストレート、フック、アッパーなどあらゆる角度でしかも体幹ごと打っては引きを繰り返していればそりゃ発達もします。

ただし、それでは「パンチ力」という「押すパワー」につながる根拠にはなりません

・・引いてるだけですから・・・

ここで二つのパターンをご紹介したいと思います。

一つはパンチというものはそもそも押すイメージだけで打つのか?という事が言えます。

これは「ムチ」を想像していただければいいと思うのですが「ムチ」をただひとつの方向に思いっきりブーンと振ると威力がでるのか?というとそうではないです(^^;

「ムチ」って、振った後に「引く」動作を加味したときに初めて先端が「奔る」動きがでますよね?

実はパンチにもこれが言えて、打った後素早く「引く」動作が入る事で、インパクト直前に「奔る」動きが加味されます!

これはジャブなどの比較的スピード勝負のパンチを打つ時に、特に有効に働くテクニックです!

このため、押すパワー・・・だけでなく引くバワーも備わっていた方がパンチ力アップに有利に働くのは容易に想像が出来ると思います。

・・・しかし・・・

背中の筋肉、特に分かりやすく広背筋としますが、パンチを引く時に(つぎのパンチを出す時)この筋肉ってまず格闘技の技術の面から見て言うと、そんなに大袈裟に腕を引いてはいけません。

みなさんファイティングポーズをとって片方の肩甲骨をぐっと引いてみましょう。

・・・・ノーガードになっちゃいます(^^;

顎丸出しですよね(^^;

打ち合いの中で顎なんて出すのはちょっと問題すぎです。

コンビネーション打っているときは相手も大抵負けじと打ち返してきているか打ち終わりを伺っているからです

もちろん多少は引きますしコンビネーションブローのなかで「回転のきっかけの一つ」にはなっていますが、片方をぐっと引いて片方を出すというそんな簡単な代物ではありません。

また単純に背中の筋肉がついていると身体の回転は悪くなります!

身体の回転の動力と起点の大半は下半身と体幹です。

例えば右ストレートは右足の外旋、外転、膝の伸展と股関節の伸展から骨盤を回し、体幹の各筋肉(外腹斜筋、内腹斜筋、多裂筋、回旋筋等)の伸張反射とパワーを利用して脊柱(体幹)を回します。

さらに胸、肩、三頭筋を使ってパンチをだします。

背中を引くと回転が速くなりそうな感じがすると思いますが、この一連の回旋運動に「背中の筋肉の引きの関与」はけっして大きな物ではありません。
(ちなみに左足も実は外旋、外転、伸展の働きをして骨盤の回転をストップさせる方向に働く)

そして回転の効率でいえばもちろん一連の動力の上にある重量物は軽い方がいいわけです。(軽い方が速い)

つまり脚、体幹に比べ、横隔膜から上は軽い方が回転の速度から言えば有利になります。

しかし、もちろんこれでは「スピード的」には有利になっても「パワー的」には不利になります。(伸張反射的にも不利になる)

慣性モーメント

ここで大切なキーワードに「慣性モーメント」というものが出てきます。

簡単に言うと「軸から距離とその重量物がもたらす慣性モーメント」とでもいいましょうか?

軸からの距離から遠い所に重量物があると、動かし出すのがめっちゃ大変(だから回転率は悪くなる)だけど、一度動き出すと凄い慣性モーメント(パワー)を発揮する・・・

という感じでとらえていただければいいと思います

では広背筋、この慣性モーメントにはたらくのか?ですが

これは軸からの「距離」と「重量」がわりとキーポイントです。

背中の筋肉って・・・軸に近い所にありますよね?

回転軸からさらに遠く、そして重量があるのは・・・「肩」と「腕」です。

つまり慣性モーメント的にパンチに働くとしたら軸に近い背中より、腕や肩の関与の方が遥かに「重い重量物」でありパンチのパワーに働きます。

じゃあその腕を勢い良く引く背中が・・て、だからそんなに背中ひいちゃダメなんですよね(^^;

ノーガードになってボコられちゃいます(TT)

パンチを打つ時の「軸」について

パンチとは純粋な回転運動・・つまり2次元的な動きではなく、前方重心を移動しながら脊柱を3次元的に動かす複合動作です。

そもそもパンチ打つときの回転の中心は脊柱でもありません。

どちらかというと「引く側」の背中側にやや回転軸がずれるのです。

ファイティングポーズをとって右ストレートを打つ時に左肩を「中心」に右手をだすとぐっと右肩ごと前にでて力強く打てます。

逆に右肩を中心に回ろうとすると左サイドが引かれるだけで全くパンチに推進力がえられません。

つまり「引く側の背中」は、回転軸にますます近くなるのでここに筋肉があっても慣性モーメント的にはかなり影響力はすくなくなってしまいます。(ないとはいいません)

みなさんファイティグポーズをとって力強く何回かパンチを左右打ってみて下さい(4〜5発ほど)

次に「背中を引く事をめっちゃ意識しながら」同じようにパンチを左右4〜5発打ってみて下さい。

打つ手に力が入りますか?

やってみれば簡単です。

パンチに体重をのせる・・・いわば重心の前後移動が微妙にやりずらくなりませんか?

ちなみに、ここまで細かく書くといろいろと違うアンチに言われそうなので権威の力も借ります(笑)

「力学でひもとく格闘技」という(谷本直也先生著書)でははっきりと「背中の筋肉がパンチ力に結びつくというわけではありません」P185、で述べられております。

パンチ力の原動力が脚と骨盤、体幹と結びつく一連の動作であるということは、石井直方先生は「うねり動作」としていろいろな著書でご紹介されております。

しかし、ここまで言っておいてなんですが・・・

実は僕は背中の筋肉は「パンチ力にはある程度生きる」と考えております(^^;

僕は「いやいや、背中の筋肉があった方がやはりパンチ力的には有利なんじゃない?」と思っています。

背中の筋肉というのは直接的には「パンチ力」には影響しないというのが、筋肉の動きから見た一般的な解釈です。

しかし、僕は「いやいや、背中の筋肉があった方がやはり、パンチ力的には有利なんじゃない?」と個人的に思っています。

まず、みなさん立って壁に片手をついてみて下さい。

そのまま壁にぐっと体重をかけるようにすると・・・・肩が後ろに押されますよね?

肩関節というのは非常に自由に動く関節です。

何がいいたいかというと、胸、肩、上腕三頭筋が収縮して腕が前方に押し出されて、サンドバックや人間などの目標物に当たった瞬間・・・・

その衝撃力は、前方にだけ行く訳ではありません!

いま、肩がぐっと「後ろ」に押されたような方向、つまり後ろの方向への「反発力」も自分に対して発生するのです。

例えば、宇宙空間で自分が宇宙ステーションに向かってパンチしたら、まあ宇宙ステーションも少しは影響を受けるでしょうが(笑)、基本自分が後ろに飛んでいってしまうと思います。

パンチが当たった瞬間の衝撃は自分にもかえってしまう・・・

特に体幹や身体ごと自分が後ろに飛ばされるというよりは、一番自由な肩関節や、実際に激突しているにその衝撃が返ると思っていただくとよいと思います。

特に肩関節が後ろに押された場合に、この方向への力に対してあらがう筋肉は、やはり直接的には胸、肩、上腕三頭筋などの腕を前に押すパワーになります。

そして背中の筋肉はこれらを「間接的」に助ける効果があると思っています。

どういうことかというと、肩関節が後ろに押される場合は、当然肩甲骨ごと後ろに押されるはすです。

そうなると肩甲骨周りの筋肉が「伸ばされながら負荷がかかる状態」つまり専門用語で「エキセントリックな負荷がかかる」状態ということになります。

つまり、ここに沢山の筋肉がついていると、その「伸ばされる力」に対して対抗できる筋肉が沢山出来る事になります。

つまり、伸ばされづらくなる・・・言い換えれば肩関節が、拳が目標物に当たった際の反発力に対して後ろに行きづらくなる事が考えられます。

すると衝撃力が後ろに行かない分、胸・肩・上腕三頭筋の収縮から生み出させる前への推進力は、目標に当たった後も「貫通力」として充分に発揮されやすくなると言えるでしょう。

イメージとしては、肩周りの後ろに沢山の「粘土」をもっておくとそれが土台となって、なかなか土台ごと後ろに持っていくのは難しくなるというイメージでしょうか?

ベンチプレスの大会では、バーベルをスタートポジションにラックアップしてホールドしている際に「肩甲骨を寄せる」のが一般的となっています。

これは胸の筋肉を出来るだけ伸ばした状態で試技を行い、胸の筋出力を出来るだけ稼ぐ事が目的です。

そしてもう一つの目的は、背中側の固定・・つまり土台をしっかり固定する事により、胸側の筋肉のパワーをいかんなく使いたいという意図もあるのです。

以上の理由から「背中の筋肉はないよりはあった方が、「パンチ力」には、直接的にではないが間接的に有利に働く」ということが考えられるという事でした。

今回の記事は僕の全くの持論ですので、突っ込みどころも満載かもしれませんが、一応運動生理学上、そして物理的な運動特性上それほど外れてはいない話だと思います。

よろしければぜひご参考にして下さい!

ではでは!

関連記事 「パンチ力を上げるためのトレーニング法」について

関連YouTube動画 漫画は本当か? パンチ力に背中の筋肉は、本当に必要なの?

PS

この度、本を出版することになりました。 頭からつま先まですべてのコリと痛みをとる事典「史上最高のストレッチ」と言う、全身のコリや痛みに対応するストレッチ本です。

著書 【史上最高のストレッチはこちらから】  新星出版社

全国の大手書店さんでもご購入いただけます。 どうぞよろしくお願いいたします。

史上最高のストレッチ

オススメ

YouTube Fitnetssfield
チャンネル登録者数1万人突破!

インストラクター&パーソナルトレーナー歴30年の野上が、ブログでは書ききれなかった情報をYouTubeの動画で分かりやすく解説しています。

\ チャンネル登録お願いします /

YouTubeチャンネルはこちら

-格闘技
-,

© 2024 Fitnessfield(フィットネスフィールド)